一般に中尊寺経と通称される一切経は、狭義に奥州藤原氏・清衡の発願により中尊寺に奉納された「紺紙金銀交書一切経」であり、各行ごとに金地と銀地を交互に使い写経する。近世に大部分が高野山金剛峰寺に移管されており、奈良国立博物館や京都国立博物館にも所蔵例をみる。
また、広義の中尊寺経として、清衡の子・基衡(長治二1105~保元二1157)と孫の秀衡(生年未詳~文治三1187)両名が発願した紺紙金泥の一切経も存在し、提出品のように金銀交書の体裁を取らず、巻首の見返絵から巻末に至るまで金泥のみを使用する。