今回、尾張で二十代以上続く旧家よりの新資料という触れ込みで出品を得た。
兎耳形兜にはいくつかのパターンがあり、掲出作品と同形は靖国神社遊就館に兜鉢のみ伝世しているが、具足の形態として発見されたのは本品が初の可能性があり、全体の構成から製作時期を紐解く手掛かりとなりうる。
兜は鉄地、越中頭形に近い鉢金に張懸とする。そのためか吹返は設けない。頬当は鉄錆地に鑢目を入れ、髭を銀象嵌とする。
胴は鉄板札を矢筈頭とした二枚胴で、胴回りは120㎝を超える大型とする。腰取とした長側二段の板札は黒漆に銀粉を蒔いたような変塗とする。本来この部分は草摺を繋ぐ揺絲によって札頭のみ表に現れるもので、そこにかけられた手間は、本品の生まれの良さを象徴する点と云えよう。胴裏は白檀塗とし、韋張は後部を欠く。草摺は朱漆塗練韋を矢筈頭とし、四間のみが現存する。その寸法は胴と同じく、一般的なそれを大幅に超えるものである。
三具については特に籠手に特徴があり、裏の打ち合わせでなく一続きの鎖に腕を通す形式を採用している。佩楯と共に、家地は欠失する。
全体的に金茶威絲は脆弱で、特に胴は損傷著しいため、応急の下縅みのみで現状を維持する。具足立の使用も現状危険と判断し、平置きでの撮影でご容赦頂いた。
また、兜の𩊱三段目や先述の草摺、臑当など欠失してしまった箇所が散見されるものの、
それ自体は本品の希少性を損なうものではないと判断する。
#変わり兜 Kawari Helmet “kabuto” with rabbit ears