高名な甲冑研究家である山上八郎の「錆色塗紺糸威二枚胴具足 江戸時代中期、オヨソ元禄頃」の解説(昭和49年印刷)が付帯する。頭頂から臑当まで一作。家地の一部に脆弱、胴の小札部に古修理をみるほか保存極めて良好。
兜 鉄地錆色漆塗十間筋兜。鉢金は膨らみの強い円形、頭頂に金工六段の八幡座を据え、前正中に金工で刻座を添えた花先飾を持つ三条の篠垂と一本角元本(鉄)を打ち、後正中に二条の篠誰と笠印付鐶(銅鍍金)を備える。眉庇は当世額金とし三光鋲で留める。銘は内張が健全であり未確認。吹返は一段でシコロは板札五段を紺糸で素懸に威す。素懸威は面頬垂れにみられ、腰取、草摺、袖は同色の紺糸で毛引とする。
前立 木胎金箔押繰半月。
面具 鉄地錆色漆塗烈勢頬。板札四段を耳糸を啄木とし、紺糸で素懸に脅す。啄木糸(耳糸)は草摺、袖に見る。
胴 鉢金の褐色に比べ明るい茶色とした鉄地盛上板札の横矧腰取二枚胴。袖、三具の金具は同色とする。左脇腹に茶皮の鼻紙袋を付ける。胴の主体部は素胴の綴目で飾る。
胸・脇・背板は黒地に古様の桐唐草で加飾する。覆輪はすべて盛上金泥とする。肩上には亀甲金包(紺羅紗)の満智羅と小鰭を当てる。羅紗の亀甲金包は臑当の立挙にも用いる。満智羅の家地が大破するが、同家地は佩楯と臑当にも用いるが脆弱化する。鞐は象牙とし、繰締鐶は鍍金毛彫。草摺は水牛角の鞐で脱着し、煉皮盛上板札を七間五段とし、紺糸で毛引に威す。裾板に白熊毛を植える。
袖 当世形六段。
三具 本来の一具で錆色、菖蒲皮(縁)、麻浅葱の家地を一定する。皺瓢籠手、七本篠臑当、 小篠佩楯。
付帯 素木具足櫃(後代補)