日吉社の山王祭礼は独立画題として、あるいは他の祭礼と組み合わせて描かれる。
この屏風は右隻に山王祭礼、左隻に上賀茂社の祭事である競馬を組み合わせ一双とする。
右隻には日吉社の神事で、唐崎の沖合に浮かぶ供膳船をめざし神輿を載せた船が競漕する船祭が描かれ、石山寺や瀬田の唐橋など名所を配す。近世初期に流行する祭礼図屏風には水上の祭りを描くものは少なく湖南を華やかに色取る山王祭礼図は見る者を喜ばせたと想像される。
左隻には上賀茂社の祭事競馬を中心に洛中洛外の名所が描かれるが、両端二扇を欠くのが惜しまれる。全体の細部に至るまで丁寧な筆致をみせ、人物の数も多く、あらゆる階層を描く掲出作品は、初期風俗画としての資料としても大変興味深い。