『日本の名兜 下』(笹間良彦)P.248所載 義通・早乙女家の鉢姿ながら、室町末期に隆盛した阿古陀の余香を感じさせる様は、時代の過渡期を象徴していると云えるだろう。高級品を志向する旧来の装飾でありながら、新形式の鉢金を採用したこともまた往時の気風を感じさせる。
鍛えの良い四十六枚の鉄板を矧ぎ合わせ、全ての筋に銅鍍金覆輪を、腰には桧垣を廻らせる。前正中には小刻座付の篠垂三条を垂らす。天辺には玉縁・透菊の抱花・小刻・菊重・裏菊座を重ねて八幡座とする。四天鋲、響孔はない。眉庇は共鉄で早乙女風とし、下縁は素銅唐草毛彫の覆輪を廻らし、中央に一本角本を立て、三光鋲を左右二箇所に打って留める。𩊱は鉄板札五段を日根野形に設えるが、裾の開き具合から笠𩊱の名残を匂わせる。吹返は一段、撫角形の黒漆塗とし、眉庇と同じ覆輪を廻して中央に金工丸紋を据える。
参考文献『日本の名兜 下巻』(笹間義彦)