南蛮人散策図柄鏡
先を歩くのはカピタンであろうか、首元に襞襟を付け、筒袖の上衣にカルサン(ズボン)を履き、右手に軍配を、左手に長柄のキセルを持つ、あとに続く従者は、左手に煙草の葉を持ち右手には火種であろうかを持つ。
本図は、南蛮人の渡来によって日本の喫煙文化がはじまった起源を如実し、同時に、偶然かも知れないが江戸前期の柄鏡(本格的な鎖国令・寛永十六・1639)以前では「佐渡」が喫煙に誰よりも興味をもって鋳造化を推し進めたことを知る。それは現存する南蛮人柄鏡の二図(長野正風旧蔵の神戸市南蛮美術館が所蔵する南蛮人喫煙図、南蛮人散策図)が「天下一佐渡」の作であることからも首肯されよう。
南蛮人散策図には個人蔵を加え、二点の遺品が報告される。以上の情報によって、掲出は散策図の三例目にあたろう。さらに、鋳上がり具合を観察すると、三面とも踏み返しではあるが、作調をみると掲出は、南蛮美術館蔵と個人蔵の中間に位置しよう。掲出には古様の木綿型染の被せが付帯する。
参考:『神戸市立南蛮美術館図録VoL1』・昭和43
『柄鏡大鑑』小林達雄監修・平成六
『南蛮美術の光と影』サントリー美術館ほか・2011-2012