小特集 「掌上の遊び」より
日本人は、小さいものを作る、或いはものを小型化する技術に長けた民族である。現代においてもその質が発揮されていることは言うに及ばない。美術、芸術の類に関しても同様で、日本人はそれを愛でる資質をも備えているように感じられる。
小品芸術を表す言葉として、「掌中」が挙げられよう。小品を賞玩する際、掌に置くということは最早必然の所作である。然しながら「掌中」という言葉が掌の中に収まるという意味以上は持たないことは承知するものの、どうにも「我が物とする」「支配する」といった意味が見え隠れしてならない。鑑賞するならば、小品を乗せた掌は開いていなければならない。偏屈ながら、本項では「掌の上」、即ち掌上の美として紹介したい。佛教に曰く、御佛の手は衆民の救済のため無限の広さを包含すると云う。掌とは、物理的な広さを超えた世界を諾なうものと形容されるのである。
小品とはいえ、仮託された世界観は計り知れない。本特集を通し、凝縮された小宇宙を掌上で体感していただきたい。