1996年に奈良県立美術館で開催された「没後二〇年記念特別展純情の画家不染鉄展」を最後に公的機関での単独開催展はなく、二十一年後である2017年「没後40年幻の画家不染鉄展」(東京ステーションギャラリー・奈良県立美術館)を機に広く注目されるようになった画家。富士の画題は大正十二年、青年時代を過ごした、伊豆大島の再訪を機に代表作でもある《山海図絵(伊豆の追憶)》を描いた作品が有名であり、富士に対する思いは計り知れない。
不染鉄(明治二十四・1891~昭和五十一・1976)は日本画家。東京小石川生まれ。本名哲治のち哲爾。号鉄二。伊豆大島、式根島に写生旅行に行き、漁師をして暮らす。大正七年京都市立絵画専門学校入学、上村松篁と親交を結ぶ。帝展・日本美術展で活躍。戦後は正教高等学校校長などを歴任。画壇から距離をおいて制作した。