日本に於ける洋風絵画の発端は宣教師達と共にあり、布教活動のため建造された教育機関(コレジオ)などで教えられた。大和文華館蔵の「婦女弾琴図」は桃山時代に描かれた初期洋風画で、地塗を施した和紙に胡桃油を混ぜた日本顔料で描くことで油絵に近づけている。掲出に立ち返ると、画面左下に獅子と鷲を意匠化した欧風印を捺しており、「婦女弾琴図」との一致をみせる(『婦女弾琴図』の印は天地逆位)。同印を捺す作品は幾つか確認されているが、その中に「信□」と読める落款を有するものがあり、掲出も信□の作とみて大過なかろう。信□についてはその仔細を全く明らかにしないが、掲出の如き達磨図を数点確認することから、コレジオで学んだのち棄教したと見る説もある。背面墨書にある「廣禅寺」については曹洞宗寺院の幾つかを知るが判然としない。