Iron Eight-Plated Kabuto (Helmet) Included, Two-Piece Vermilion Armor

鉄八枚張兜付胸取二枚胴朱具足

兜           鉄板八枚張の筋兜。起伏は緩やかな鉢金で、朱漆塗とし、天辺の八幡座と前正中の二本角本以外の飾り気を排す。眉庇は当世素文で同様に朱漆塗し、縁は捻り返すのみとする。𩊱は当世五段、箔押として縹絲で毛引に威し一段目を吹返す。吹返は箔押素文で六曜が透かされる。なお𩊱は腰巻板のかなり低い位置で留められる。

面具       鼻金具を持たない半頬。両面を朱漆塗とし、𩊱と同工の垂四段を付す。漆の修補を見受ける。

胴           前立挙三段は切付札として紅、縹絲の順で色々に威して胸取とし、矢筈頭に刻み付けた板札は韋菱綴も塗込め、後四段、長側五段の二枚胴に仕立てる。三板は素文、背に合当理の痕跡をみる。草摺は練韋六間五段を威下げる。

袖           切付盛上札を箔押した当世袖ながら、後代の寄せの可能性を否定し得ない。

三具       金襴家地（大破）の朱漆塗平瓢籠手、練韋佩楯、三ツ割の立挙金物を鎖繋ぎとした五本篠臑当は何れも仕立を通底しない。

付属       朱漆叩塗の具足櫃には「丸に三ツ引両紋」を据える。木胎箔押の天衝も添うが後補。