Y氏の盛期伊万里Collection
<オークション小特集>
Y氏の盛期伊万里Collection
Y氏Collectionは、新門前(京都)に店を構えた恋壺洞主人との清遊によって形成された。
Yと恋壺洞主人(福地通佑、昭和3・1928~昭和51・1976)との出会いは、昭和三十年代に遡り、福地の出張先(博多)での四十八歳という如何にも若い、惜しまれる急逝に、清遊は途絶を余儀なくした。
Yは未亡人の委嘱を受け、博多での遺骸の処置に奔走するなど家族ぐるみの信頼関係を維持した。健康を誇るYではあるが、八十歳を迎え、終活の一環としてCollectionとの離別を決意し、一点残らず処分するようにと依頼が寄せられた。
福地は美術品の輸入商社から骨董業界に参入して頭角を顕したが、いわゆる業者市場には違和感を唱え、自身の美意識と価値基準を武器に、顧客を東京に求めた。
昭和三十年代の第一次と呼ぶべき初期伊万里ブームを瀬良陽介(石苔堂)とともに牽引し、がっしりとした体躯に、常にパイプを離さず、シカゴのギャングを思わせる風貌で新門前を闊歩した。
Y氏Collectionの特徴は、恋壺洞から買ったのではなく、勧められて求めたという特殊性にある。結果的に、恋壺洞の美意識が直截に反映したCollectionに成長した。
福地は、初期伊万里の優品を数多く扱った業者として名を馳せ、初期伊万里の贋物事件に抵触するなど毀誉褒貶をも甘受したが、この盛期伊万里Collectionは、『盛期の伊万里』(山下朔郎・昭和49年・1974)の刊行に前後して形成されており、直後に熱狂的な盛期伊万里のブームが到来したことを思えば、福地の古美術商としての先見性を再確認させられると同時に、Yに優しく接する福地の、何時もの強面とは別の人間味の溢れる一面を改めて垣間見ることになった。
<108回古裂會オークション>
下見会 9月6日(金)午後、7日(土)
会場 京都市勧業館 みやこめっせ
入札締切 9月12日(木)必着
https://www.kogire-kai.co.jp